善意の反抗的精神で描く私たちの未来図

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参考書籍

(1)クリティカル・ビジネス・パラダイム 社会運動とビジネスの交わるところ(山口周著、プレジデント社、2024)

ビジネス賢人であり、日本のハイコンセプター、山口周氏。今回は新たな書籍を出版されていたので、思うところを書き記していくことにします。

そして、孤独なレジスタンスたちに向けたエールの書はばら撒かれた

まずはじめにこの書籍の出版自体が、より良い世界を目指したいという少数派の人々に向けて送られた応援の書であるということです。

山口氏はこの書籍を一つの簡素な武器、「リベレーター」という銃に例えています。(アドバイスも弾丸!!)

「筆者である私としては、この本の執筆・出版自体を「社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネス」の実践と捉えています。(p18)」

「第二次世界大戦中、ナチスドイツの支配下にあったパリのレジスタンスによる抵抗運動を支援するため、連合軍は極めて簡素な銃=FP45、通称「リベレーター」を大量に製造し、百万丁以上を空からばら撒きました。(略)重要なのは「このような理不尽に対して抵抗しようとしているのは君だけではない」というメッセージが、孤独な抵抗運動を強いられているレジスタンスたちに届いたということです。リベレーターは、言うなれば銃という物をかたどった世界からのエールなのです。 筆者もまた、本書を通じて同じことをやりたいと思います。(p19)」

「つまり読者の皆さんに「クリティカル・ビジネス・パラダイムの拡散」というゲリラ戦を私と一緒に戦うアクティヴィストになっていだだきたいのです。(p19)」

これらの抜粋だけを読むと武器を配るなんて物騒な、、とならなくもないですが、日々ゲリラ戦を生き抜き、社会を少しだけでも良くしたいと思うビジネスパーソンにとっての共闘の書であることには、まず間違いありません。

資本主義をハックせよ

この書を読んで、今ある大きく世界を動かせる既存の仕組み=資本主義のビジネスの力を使ってより良い社会を作っていきたいという意思が感じられました。

ただ、壊すだけではなくて内側から作り替えていくことが必要。そのためには、物事を批判的に捉えることが大事で、世界を良くしようとする仲間を応援できるような賢明さも大切になってきます。

個人的な利益に走ることなく、建設的な共生を目指すことが求められます。結果的に現状を一部肯定しながら(今の資本主義を維持しながら)、持続可能な社会へとつながる道しるべを具体的なビジネス事例を用いて表現されていました。

大きな意味でのデザインに関する3部作として

個人的には、「ニュータイプの時代」=「意味」を、「ビジネスの未来」=「人間性中心」を、今作でビジネスにおける批判精神の分野をカバーしながら、「持続可能性」をメッセージで受け取りました。

ふと、考えるとアメリカ合衆国の認知科学者、ドン・ノーマン氏の書籍「より良い世界のためのデザイン(新曜社、2023)」の副題である、「意味、持続可能性、人間性中心」と一致しており、昨今の「デザイン思考」とは異なる日本のビジネスに必要な「デザイン」の3要素を、「デザイン」という言葉を使わずに言語化しているのでは、とも考えてしまいました。

また、社会変革者というと少数派であり、社会の外れ値でもあるので、孤立しやすい側面を持っているものですが、反抗は社会の重要な資源であるとの観点を説明されており、君たちは世界の重要な一員だよ、と言われているようでした。

今後は、日本の新しいビジネスモデルの萌芽や、商社などの提案によるビジネスハックといった資本主義のハックの事例などについて山口氏の筆で読んでみたいとも思う次第でした。

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