サルの採食戦略と人の食をくらべてみた

哺乳類で、雑食性の動物として人に最も近いサル。人と食べているものをくらべてみました。

 まずはサルの採食戦略。サルの一種、チンパンジーは果実を食べるのに採食時間の6割を費やし、若葉や草の髄(ずい)などが2~3割、残りが樹皮や種子、アリなどの昆虫といった割合で食べるそうです。

これらをまとめると、一般的なサルと呼ばれる動物が選択して食べるものは、3つの分類に分かれます。それは、

1.高カロリーなもの

2.高たんぱくなもの

3.高消化率のものです。(1)

(1)(「人とサルの違いがわかる本」(杉山幸丸編著、オーム社、2010)

これを、さっきのチンパンジーの食べ物にあてはめると、

1.高カロリーなもの ⇒ 果物

2.高たんぱくなもの ⇒ 葉、昆虫

3.高消化率のもの  ⇒ 完熟した果実、若葉

 となります。

 なかでも3の高消化率なものに属する完熟した果実にチンパンジーは目がなくて、熟す手前の果実にはわざと手を出さず、完熟するのをまってから食べるほどです。完熟した果実は甘味だけではなく、そのほかの風味が複雑に混ざり合っているのでとてもおいしいのだと思います。

人の採食戦略は?

 つぎは人についてですが、いまのサルの採食戦略に食べているものをざっくり当てはめてみました。

 1.高カロリーなもの ⇒ 穀類、イモ類、果物、木の実、種子、肉(白身)

 2.高たんぱくなもの ⇒ 豆類、肉(赤身)

1の高カロリーなものには、炭水化物と油(脂)が挙げられます。グループ分けすれば、穀類やイモ類、果物が炭水化物に、木の実や種子、肉(白身)は油(脂)に入ります。

2の高たんぱくなものには植物由来の豆類、動物由来の肉がそれぞれ属します。

ここまではなんとなくチンパンジーでも食べられそうなラインナップでしたが、3の高消化率なものにはチンパンジーとは異なる戦略が加わります。なんでしょうか。

それは料理と発酵、つまり食べ物を加工することです。

3.高消化率なもの ⇒ 料理と発酵(食品加工の一種)

人がつかう「二つの炎」

 火を使うこと(料理)と微生物を使うこと(発酵)は、両方とも人間の文化の一つです。これらは動物としてのヒトを人たらしめる要素と言えます。

火の使用と発酵の共通点は、加熱や微生物の酵素によって化学反応を進めるところです。

特に酵素反応は炎のように高い温度を加えなくても化学変化が起こせるので、「冷たい炎」であるとも表せます。

言い換えると人はこの「二つの炎」による化学変化を利用することで、食べられる食材の幅を広げて進化してきたのかもしれません。進化というと大げさかもしれませんが、それほどまでに強力な手段を手に入れたのです。

食品加工は、からだの消化機能の代わりを担う目的もある

人は食品加工だけでなく、たとえば自分のちからを超えた馬や蒸気機関、計算能力を超えたコンピューターを使うことで一人の人間の能力を押し広げてきました。

つまり、これら人間の持つ知恵は、からだの能力を拡張してきたのです。

さらにもう一つ解釈を広げるとからだの機能をからだの外側に持ち出したということになります。(機能の外部化

つまり、料理や発酵といった食品加工の知恵は、からだの外側で食べている(消化の外部化・食べる前の事前消化の)役割もしているのです。

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